部長っ!話を聞いてください!
突きさすように言うと、やっと男が怯んだ顔をし、足を止めた。
私はため息を一つ付いて、男に背を向ける。
男友達が多い姉のイメージを、妹の私にも重ねてしまう男が昔から多々いるのだ。
そういう男は言葉を濁しているとつけ込んでくるので、ハッキリバッサリと、姉と私は違うということを分からせてやらねばならない。
部長の家に押しかけようと意気込んでいたのに、すっかり出鼻をくじかれてしまった。
気持ちを立て直すべく、私はエレベーターを使わずに、外階段を三階まで駆け上っていく。
滅多に他の階の廊下になど立ち入らないからか妙に緊張してしまい、私は忍び足になりながら301号室のドアの前に立った。
しっかり“神崎”と表札が出ている。
「部長。本当に住んでる」
廊下に面した窓からも、室内に明かりが灯っているのが分かる。
部長が中にいる。
私は大きく息を吸い込んでから、呼び鈴を鳴らすべく手を伸ばしていく。
けど、なかなか押すことが出来なかった。勇気が出なかった。
緊張と不安で、頭の中が真っ白になっていく。
頑張っても受け取ってもらえなかったら。やっぱり話を聞いてもらえなかったら。