部長っ!話を聞いてください!

マイナスな感情ばかりが膨らんでいってしまう。


「……今、勇気を出さないと」


分かっている。言葉で言うのは簡単だけど、うまく体が動かない。



葛藤の末……私は手を下ろした。


部長に立ち向かっていくことが出来なかった。


「明日……頑張ろう」


明日だって、頑張れるかどうかは分からない。

けれど、足一歩踏み込むための勇気と頑張るための力が、今の私には不足してしまっているのは事実である。

肩を落とし踵を返したけれど、持っている物に改めて気づかされると、また違う感情が込み上げてきた。


誕生日プレゼントだけは……今日中に渡したい。


部長の家の扉をじっと凝視した後、私はショッピングバックをドアノブに掛けた。

そして大きく息を吸い込んでから、呼び鈴を押し――……駆け足でその場から逃げ出した。

いわゆるピンポンダッシュである。

呼び鈴を押したのだから、扉くらい開けるだろう。

その時に、部長が私の置き土産に気づいてくれれば、それでいい。

ずっと持っていたショッピングバックがなくなり、今私が持っているのは、ドラッグストアで購入した消臭スプレーの詰め替え用の袋だけである。

ちょっとだけ、身と心が軽くなった気がした。


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