部長っ!話を聞いてください!

女子社員の間から、部長の困った顔と、吉田君の悲しそうな顔が見えた。

しかも、今、吉田君は“三人”と言った。明らかに、そこに私も含まれている。

吉田君だけでなく、部長にまで気持ちを見透かされてしまっているような気がして、ちょっぴり居心地が悪い。


「部長、何か欲しいものありますか?」

「今ハマってることとか、ありますか? 趣味とか」


先輩女子社員二人が口ぐちにそう問いかけながら、神崎部長ににじり寄っていく。


「神崎部長って、結構多趣味な方ですよ。カラオケ行ったとき歌も上手かったし、ダーツも上手かったし、本とか映画の話題も豊富だし、料理もするって言ってたし、ガーデニングもって」


女性社員の迫力に逃げ腰の部長に代わって、吉田君がそれに答えた。

早口で流れていった部長の情報を、私は必死に記憶の中に押しとどめた。


「神崎部長すごーい。今度どこか遊びに連れて行って下さい」

「さすが部長! プレゼント選びにも力入っちゃう」

「いや。俺は単に暇なだけというか……」



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