イレカワリ~番外編~
アプローチ-歩side-
その日は予定通りチャーハンを作った。


隠し味に少しだけ入れたトマトジュース。


トマトが食べられない海はそれをうまそうに全部食べた。


空になった皿を見ると、俺はいつも嬉しくなるんだ。


自分が作ったものをそんなに嬉しそうに、全部残さず食べてくれる人がいる。


俺にとってはそれが幸せな事だった。


「なんだよ、ニヤニヤして」


思わず顔に出ていたらしい、海に怪訝そうな顔でそう言われた。


「今日のチャーハンにはトマトジュースが入ってたんだ」


食べ終えた後だからいいだろうと思い、薄情した。


すると海は大きく目を見開いて「まじかよ!」と空になったお皿に視線を向けた。


「トマトは栄養価が高いんだ。どうすれば海が食べられるか、考えてたんだ」


「そっか……そうだったのか」


海はショックなのか嬉しいのかよくわからない表情を浮かべて、「うんうん」と、何度も頷いている。
< 20 / 117 >

この作品をシェア

pagetop