ある噂話の世界にて
彼女の手を振り切ろうと
足に力を入れて前を歩き出そうと……

無理だった


「円ちゃん行かないでよぉ。
 さっきついてきてくれるって
 いったじゃん。」

「ごめん。無理」

なんとかして彼女の手から
逃れたいが、力が強い

この力、さっきまで道端に
倒れていた人にはありえない

ましてや私と同じような体型を
しているのに


「私、学校へ行かなきゃいけないの。」


「ダメ。私と一緒に
 来てもらうの。」


やばい

このお嬢様なにを考えている?


「あなた何者?」

さっき知り合ったばかりの
人に向かって何者?と
訊くのは失礼だと思う

だけど、訊かずにはいられなかった


「何者って言われてもなぁ…」

困ったように首をかしげたが
手に入る力はかわらない


「あなた、なにを考えているの?」


困った顔をしながら言う
「うーーん。
 仕方ない!!答えてあげよう!!
 前者についてはあとで詳しく話す。
 後者は円ちゃんが選ばれたから!」


「選ばれた?
 何に?
 誘拐体験ツアーになんか申し込んだ
 記憶ないんだけどっ!」
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