小悪魔な彼にこっそり狙われています
「……あ、井上さん。おはようござい……」
覇気のない口調であいさつをしながらこちらに近づこうとした彼に、一気に思い出すのは、先ほど見たベッドで眠る半裸の姿。
その細身のスーツの下に隠れたあのしっかりとした体つきを思い出すと、一瞬にして恥ずかしくなってしまい、全身の熱が上がると同時に私はその場を逃げるように駆け出した。
だ、ダメだ。やっぱりダメだ。夢だなんて思えるわけがない。
だって、確かについさっきまで同じベッドにいたんだもん……!
パンプスのヒールをカツカツと鳴らしながら廊下を歩き、頭を抱える。
けど、そもそもどうして来栖くんとあんなことに?
昨日は確か、総務課と秘書課の合同飲み会で……もともと飲み会や集まりが好きな皆が盛り上がっていた中で、中心で盛り上がるタイプではない私と来栖くんは端でひっそりと飲んでいた。
そこまでの記憶は、ある。
けど普段から私はそこまで悪酔いするタイプじゃないし、お酒での失敗なんてしたことがないのに。