小悪魔な彼にこっそり狙われています
「忘れられてるのは残念ですけど、まぁ忘れてるなら教えます。昨夜の帰り、井上さんが酔いつぶれたんで送って行ったんですけど、乗ったタクシーで『気持ち悪い、吐く』って言い出して」
「え!?」
「結果吐かなかったんですけど、でもその時はこのまま吐いたらまずいと思って、とりあえずタクシー降りて休ませようと思ってホテルに」
ほ、本当にもの凄く迷惑をかけていた……!
酔いつぶれた自分を想像して気まずくなるものの、来栖くんはやはり一切表情を崩さない。
「下心なく行ったんですけど、部屋でふたりきりになったら……まぁ、そういう感じになって。井上さんも拒まなかったので合意とみなして、それから一晩……」
「わっ、わー!言わなくていい!生々しい部分は教えなくていいー!!」
さすがにそこまでは知りたくない!と、慌てて彼の口を右手で塞ぐと、その左手は私の手を掴んだ。
触れた瞬間ひんやりとした彼の低い体温を感じて、胸はドキッとしてしまう。
「なんで?かわいかったですよ、顔も声も」
そして、まるでかわいがるように、掴んだ私の手のひらに口付けた。