小悪魔な彼にこっそり狙われています
「……ごめんなさい。正直、昨夜のことを全く覚えていなくて」
ぼそ、とつぶやく私の小さな声が静かな室内に響く。
「全くって……本当に全くですか」
「う、うん……全然、なにひとつ」
さすがの来栖くんも、『信じられない』と言いたげに眉間にシワを寄せた。
あぁ、引いてる……絶対引いてるよね!
だってするだけしておいて『記憶がない』なんてありえないもんね!
申し訳なさとみっともない気持ち、情けない気持ち。それらに押しつぶされそうになりながら、肩身狭く謝る。
「だからね、その、昨夜のことはなかったことに……」
「なんて、しませんけど?」
「え?」
なかったことになんて、しない?
まさかのその発言に驚き顔を上げると、気づけば彼はすぐ目の前にいて、壁と自分の間に私を挟み込むように立っている。