小悪魔な彼にこっそり狙われています
「あの人もあの人ですけど、井上さんももっと優しく言ってみたらどうですか」
「なっ!」
「きつい言い方に耐性ある人とない人さまざまですし、その人やその時に合わせた言い方も必要だと思うんですけど」
来栖くんから淡々と言われるそのひと言に、先ほどのオフィスでの皆からの視線を思い出す。
なによ、来栖くんまで。結局皆私だけが悪いって言いたいの?
確かにもっと優しい言い方もあるかもしれない。
自分でも、厳しい言い方ばかりではいけないと分かってる。
けど、優しい言い方で分かってくれないから、どんどん言葉はきつくなる。
その言われ方に怒りや悔しさなど、さまざまな感情が一気にこみ上げる。
「っ〜……あんたになにがわかるのよ!!」
その複雑な心を振り払うように、こぶしで蛇口をガン!!と思い切り殴った。
するとその瞬間、衝撃で詰まりがとれたのか、蛇口からは一気に水が噴き出す。
先ほど全開に緩めたままだった蛇口からは、当然勢いよく水が出て……その水は飛び散り、目の前にいた来栖くんに重点的にかかった。