憂鬱な午後にはラブロマンスを

珠子を取り巻くこの3人の関係が、もしかしたら世に言う恋の三角関係ではないかと郁美はそう睨んでいた。


「間違いないわ。絶対に私の勘は当たっているわ。」

「何が当たっているの?」

「ほほほっ、こっちのことよ。」


郁美はこの三角関係を調べるのには二人と行動を共にするのが一番だと感じ、旅行の間は二人とは1分も離れることなくスッポンのように食い付いて回ると決めた。


「郁美、トレイくらいゆっくりしてきていいのよ?」

「実にゆっくり用を足したわよ」


珠子らとはぐれてはなるものかと、トイレさえ新幹線並みの速度で用を済ませた郁美。珠子は郁美の様子のおかしさに異様な感覚を覚える。

何がなんでも食らいつこうと必死の郁美に洋介は何となく郁美の考えが分かってしまったようだ。

やはり、どんなに隠しても元夫婦だった二人なのだから、全くの上司と部下の関係にはなれないと分かっている。

そこまで冷酷に徹底出来ればいいが、未だに珠子を忘れられない洋介にすれば上司と部下の域を超えた関係へ進みたいと思っていただけに、それを郁美に勘づかれても仕方のない事だと思っていた。


「珠子、彼女は親友なんだろ?」

「え・・・ええ、まあ。」

「彼女は気付いているようだ。もう隠す必要はないだろ?」


珠子は洋介が夫婦だったことを郁美に明かそうとしていたことに戸惑ってしまった。

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