憂鬱な午後にはラブロマンスを
「それに、隠そうとするから彼女は疑いにかかるんだ。」
「疑うって何を?」
「社長との関係を知らない奴はいないだろう?」
珠子は静かに暮らせればそれで良かったはずなのに、何時からこんな風に騒々しい毎日になったのだろうかと思った。
それに、今は離婚した元夫と同じ職場で上司と部下として働いている。
離婚した傷は癒えていないのに次々と起こる問題にどうすればいいのか頭を悩ますだけだ。
「珠子さん、社長がお呼びです。」
何時もタイミング良く社長からの呼び出しを受ける。
洋介は肩書きにものを言わせ珠子を自分のモノのように扱う俊夫が気に入らなかった。
そして、珠子を呼び出す秘書のすました顔も洋介は気に入らない。
「分かりました。今から行きます。社長はどちらに?」
「案内します。」
珠子は小田の後をついて行くと、洋介も二人の後をついて行く。
小田は珠子を何処へ連れて行こうとしているのか、ここへは宿泊する旅館へ向かっている途中でトイレ休憩に立ち寄っただけ。
休憩が終われば皆が乗ったバスは再び走り出す。
なのに、バスから離れたところへと案内されていた。
「遠藤部長はご自分のバスにお戻り下さい。」
「珠子を何処へ連れていく気だ?」
「バスに置いていかれますよ。」
小田は優しく微笑みながらも洋介にバスへ戻れと命令するかのような口調で話していた。