女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~


 黙って何かを考えているらしいお母さんを見て、私はつい言ってしまった。

「もし・・・」

 私は一度唇を湿らせて、再び口を開いた。

「・・・もし、妊娠であれば、一番先にお知らせします」

 お母さんはじっと私を見て、それから見たこともない優しい瞳で微笑んだ。

「本当にありがとう、まりさん。まさか、孫を期待出来る日がくるなんて、この人生ではないと思っていたの」

 ありがとう、ともう一度言って、お母さんは私の手を握った。


 私はパニくっていた。

 現実的に対処出来る自信がなかった。

 だから、不覚にも、感動して泣いてしまった。

 この、私が。


 帰り道、無意識にお腹をさすってしまう自分に気付いた。

 最後の生理は4月に確かに来た。だけど、それから生理不順の私には「生理来てないじゃん!」などとは叫べないくらい普通の日数しか経っていない。

 ゆっくりと深呼吸する。彼がいなくて良かった。一体どういう顔したらいいのか判らない。

「とりあえず・・・」

 声に出して確認する。6月が来たら―――――・・・・

 6月が来て、まだ生理がなかったら。

 検査薬を買うべきだろう。自分でそう考えて、頷いた。そしてハッとした。

 やだ、私―――――――


 ・・・禁酒すべき??



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