先生どうでしょう
彼は卒業式の日に言った。「いやぁお前ら大変だった。学力も生活態度も上から下までこーんなに差があってよ」

両手を目一杯に広げる。

事実クラスにはオール「頑張りましょう」レベルから難関有名私立合格者まで、よりどりみどりだった。

本当にお疲れ様でした。だ。

彼の目が赤くなっていた。


落ち武者の目にも涙である。


私は冗談まじりに言った。「先生、お葬式にちゃんと行くからね。」


彼は「ば、ばけもの!」と言った。


ばかもの、の事だ。


言い間違いではない。彼は「ばかもの」を「ばけもの」という人だった。




【S郎】完
< 5 / 26 >

この作品をシェア

pagetop