イジワル同期とスイートライフ
「そう来なくちゃな」



バカな六条。

そんなの、よけい煽るだけなのに。


 * * *


「久住サン、焼けましたよ」

「あ、どうも」



出張先で、急きょ特約店のオーナーの家に呼ばれることになった。

一緒に来ていた営業課の駒井(こまい)という一年上の部員ともども、ホームパーティなるものに参加し、現地語にまみれている。



「やべー、現地語まったくわからん」

「俺もです」



ホストであるオーナーはご近所さんも招いており、英語が達者なのは本人と、なぜか5歳と7歳の子供たちだけで、あとはまったく会話ができない。

私服を一揃いしか持ってきていなかったので、自動的にTシャツとジーンズになったのだが、これでもきちんとしすぎていると感じるくらい、他のメンバーはラフだった。

皿を空にする前に、オーナーがさらなる肉をどさりと盛ってくれる。



「WDM、楽しみです、とても」

「そりゃよかった。僕たちもプレゼンを楽しみにしています」

「どちらにお泊りですか? よかったらうちへどうぞ」

「ありがたいんですが、明日も早くから移動なので」



庭の奥にそびえる真っ白な豪邸に、泊まりたい気持ちは湧いたものの、かなり詰め込んだ日程上、残念ながら厳しい。

今度はホテルを取らずに来てくれというオーナーの言葉に、いつか甘えようと決めた。



「夕べのホテル、声かけられなかったか」

「かけられました、ほんとにあるんですね、ああいうの」



駒井と座れる場所を探しながら庭を歩く。

声というのは、かわいい子いるよ、というあれだ。

普段はそれなりのグレードのホテルを選ぶので、そういう輩が近づかないようホテル側が配慮してくれているのだけれど、昨日はスケジュール的にやむなく中級のビジネスホテルに泊まることになったのだ。



「行く奴がいるから、声かけるんだよな」

「ないですよねえ」

「ないない」

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