イジワル同期とスイートライフ
「お前もいる?」

「お願い」



はい、と口元にグラスが差し出された。

え、いや、置いといてくれたらいいんだけど。

手が脂でべとべとなので動けず、なすすべもなく見下ろす私に、久住くんがぐいとグラスを押しつけてきた。

嫌な予感通り、タイミングが合わなくて、水が顎にしたたり落ちる。

そしてむせた。



「あーあ」

「あー、あ、って」



他人事か!

涙目になりながらゴホゴホとやる私を、さすがに気の毒と思ったのか、背中をさすってくれる。

と、その指が部屋着越しに、さっとホックを外した。

え?



「あのね」

「料理してる姿って、いいよな」



後ろから回された腕が、Tシャツの裾から忍び込む。

浮いた下着の中の素肌を柔らかくなで上げられて、声をあげそうになった。

顎を掴まれ、顔だけ後ろを向かされる。

久住くんは、私の口の回りや顎や、首までを濡らしている水を舐め取った。

熱い舌と唇が、わざとらしくねっとりと肌を這う。



「痕つけていい?」

「いいわけないでしょ」

「聞いただけ」



鎖骨の辺りを強く吸われたので、さすがに身体をよじって抵抗した。



「ちょっと」

「つけてねーよ」



小馬鹿にするように舌を出す。

服の中で勝手なことをする両手と、首筋から離れない唇とに、私はしばらくの間そうやって、好き放題されていた。

ひき肉の入ったボウルに手を突っ込んだ、間の抜けた格好のまま。

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