イジワル同期とスイートライフ
電気を消そうと枕元のリモコンに手を伸ばすと、無防備になった身体に、腕が巻きついてくる。

キスをしながら部屋を暗くした。

"おやすみ"でも"しよう"でもない半端な唇の温度から、久住くんがこの先をどうするか決めかねているのが伝わってくる。



「寝ようよ、遅いし」

「でも俺、日曜から出張だしさ」

「だしさ?」

「やり溜めしとこうかと」

「最低な発想だね」



暗闇の中で、彼が苦笑いしているのがわかった。



「こっちは切実なんだから、そう言うな」

「出張って、どこ?」

「今回は、東南アジアを何か所か」

「現地でお金出せば、発散してこられるんじゃないの」

「最低な発想だな」



笑いながらも、お互いの身体が熱くなってきているのを、意識せずにはいられない。

私は自分を、どちらかといわなくても、こっちの方面には淡白な人間だと思ってきたんだけど。

実際、もっとなんとかできないのかと相手に責められたこともあったし。

それがいったい、どうしたことか。

早く眠りたい気持ちもあるんだろう、久住くんは布団の中で手早く私を裸にすると、自分もシャツを脱いで、ぎゅっと抱きしめてきた。



「六条」

「…なに」



首筋にキスを降らせながら、もう一度「六条」と呼ぶ。

返事の代わりに、向こうの首に腕を回した。


こんなときに呼ぶって、どんなつもり?

一般的にはね、呼んだら、"好きだよ"とか、そういう言葉が続くんだよ。

知ってる?


引き締まった背中が、私の手の中で汗ばんでくる。

その後も久住くんは、かすれた声でささやくように、「六条」と何度か呼んだ。

吐息で応えるのがやっとの私は、呼ばれるたび、身体の奥深くが、じわりと熱を持つのを感じていた。

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