イジワル同期とスイートライフ
清潔なシーツに、暑くも寒くもない、ちょうどいい気温。

さらさらした肌に、久住くんのぬくもり。

窓から差し込む午後の光。

なんだろう、これ。



「空港かあ」

「来れば?」



ぽつりとつぶやいた独り言に、思いがけず反応があったので驚いた。

顔を上げると、久住くんが目を開けている。



「どのみち俺、晩メシ空港で済ますつもりだったし。早めに出て、なんか食おうぜ」

「え、それで私、ひとりで帰るの?」

「見送りって、そういうもんだろ」



別に見送ろうと思ったわけじゃないよ。

単に、面白そうだなと思っただけで。

弁解する暇もくれず、久住くんはよしよしと私の頭をなでて「6時に出ような」と勝手に約束したと思ったら、寝てしまった。

安らかな寝息が、私の髪をくすぐる。


久住くんて、私の気持ちを、どう解釈しているんだろう。

そもそもの関係に始まり、現状に至るまで、私たちは自分たちのことについて、腹を割って語ったことがない。


私のどこが好き?

そもそも、好き?


"嫌いじゃない"と"好き"の間には、途方もない距離がある。

それくらい知っているくせに、ノーと言わないだけで、イエスと言った扱いをする。


矛盾してるよ。

確信犯なの?

それとも人の気持ちに鈍いだけ?

どちらにせよ、勝手だ。


その勝手な男が寝返りを打って、仰向けになった。

腕を動かしたそうにしているので、頭を浮かせて解放してあげると、楽になったのか、ふうと息をつく。

少しの間、枕に頬杖をついてそれを眺めていると、ふいにその腕がなにかを探すように動き、私を見つけて抱き寄せた。

抵抗もできないくらいの、強い力で。

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