イジワル同期とスイートライフ
「やましいから、そう見えたんじゃないの」

「なんで俺がやましいんだ」

「なにが『彼女でもない女の子と寝るのは主義じゃない』よ、散々お持ち帰りして遊んでたんじゃない」

「ほらな、絶対そこ突っ込んでくると思ったよ」



誰だって突っ込みたくなるでしょ!



「自分が開き直ってるだけってわかってる?」

「そっちこそ、"散々"とか悪意のある誇張してんじゃねーよ」

「一度きりって感じにも聞こえなかったけど」

「昔の話」

「答えになってない」

「…まあ、3、4回は」



それは私の基準だと、けっこうな回数なんですけどね。

いい加減、分が悪いのを認めたのか、久住くんはバツが悪そうに黙った。

ふてくされたような顔で、また窓の外に目をやってしまう。


ねえ、その態度は、どういうことなの。

追及の隙を与えたのが面白くないの?

焼きもちを焼かれているみたいなのが、面倒なの?

それとも、単なる契約みたいなこのつきあいで、そんなところいちいち気にするなって言いたいの?



「…昔って、いつ頃のこと?」

「すげー前だよ、入社したばっかの頃」



視線を落としながらも、答えてくれる。

4年前ってことか。

確かに"昔の話"なのかもしれない。



「俺、学生時代とかけっこう調子乗ってたし、でももうほんとにそういう遊びしてないから」



気まずそうな目が、私のほうを向いた。

今度はこっちが戸惑い、視線が泳ぐ。



「別に、私にそんなこと、言わなくたって…」

「そりゃないだろ、黙ってりゃ勘ぐるくせに、説明聞く気もないのか」



顔が熱くなった。

久住くんて、どうしてこう、正しいんだろう。

なにを言えばいいのかわからなくなって、仕方なくうつむく。

テーブルの上で、久住くんが私の手首を掴んだ。



「そんな顔すんな」

< 57 / 205 >

この作品をシェア

pagetop