愛しのカレはV(ヴィジュアル)系




日曜日、私はゴスロリの二人組が言ってた場所へ向かった。

商店街を抜けて、真っ直ぐ…

しばらく歩くと公園があった。
間違いない、きっとここだ。
木もいっぱい植えてある。
けっこう広い公園だ。



迷うことなくその場所に付いて、ゆっくりと公園の中を歩いた。



(あっ!)



広場のような場所に差し掛かった時、私は慌てて木陰に身を隠した。
だって、そこには小さな男の子とボール遊びをするリクさんがいたんだもん…
私と会う時みたいに、変装なんてしてない。
長い髪をなびかせ、サングラスやマスクで顔を隠したりしていない。
少し離れたベンチには髪の長い綺麗な女の人が座り、穏やかに微笑んでいた。
すぐにわかったよ…それがリクさんの奥さんだってことは…



「あ~!」

リクさんの投げたボールを男の子が受けそこね、ボールはコロコロと転がり、男の子がそれを追いかけていく。



「空、あんまり走るんじゃないぞ!」

「パパの下手っぴ!」

「へたっぴなのは、おまえだろ!」



(パパ……)



決定的だった。
その言葉が、ぐさっと私の胸に突き刺さった。



やはり、あの二人の言ったことは本当だった。
リクさんは結婚してたんだ…



あぁ…わかったよ…
リクさんが変装してたのは、浮気がバレないように…そのためだったんだね。



私はふらふらとその場を離れた。



そういえば、あの男の子、リクさんに良く似てた…



そう思ったら、涙が一粒こぼれて落ちた。

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