人間嫌いの小説家の嘘と本当
第三章

私は、ボディガード


「ん……」



眉を顰め、薄く目を開ける。
ここ、どこ?――。

見慣れぬ部屋。埃っぽい空気に、鼻の奥を突き刺す古い油の臭い。

そうだ、私。真幸に廃工場に連れて来られて――。
記憶を手繰り寄せる。

私の気持ちが、やっと真幸に届いたと思った矢先、後ろから頬に傷のある男に、後頭部を殴られ気を失ってしまった。

真幸、奴らと手を組んでたのかな。
それとも唆され利用されただけなのかもしれない。
――立ち直ってくれればいいけれど……。

こんなこと侑李に知られたら、お人好しって馬鹿にされそう。
不意に笑いがこみ上げ、はたと気付く。

侑李……そうだ、彼に危険を知らさなきゃ。
今、何時?あれからどれくらい時間が過ぎた?

焦りが体を突き動かし、慌てて体を起こそうとした。
けれど手は後ろで縛られているのか動かすこともできず、頭も男に殴られた傷跡がズキズキ痛み始める。

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