人間嫌いの小説家の嘘と本当
その瞬間、頭の中でパンッとガラスが砕けるような音が響き、怒涛の様に記憶が押し寄せ、その場に崩れ落ちた。
「……思い出した」
額を抑え、小さく呟く。
一度に記憶が甦ってきた所為か、上手く処理しきれずにまだ戸惑っている。
けれどあの日の出来事も、その後に起きた事故の事も全て思い出した。
「涼花、大丈夫か?」
「お客さま?」
いきなり、その場に座り込んだ私を心配そうに覗き込む侑李。
スタッフの方も、オロオロしている様子だ。
「大丈夫です。ちょっと眩暈がしただけなので」
スタッフの方に笑顔を見せ、彼の手を取って立ち上がる。
そして祭壇へと続く道をゆっくり歩き、後ろに控えているスタッフの方に聞こえない様に小声で口を開いた。
「侑李。私思い出したよ、あの日の事」
「え……そうか」
侑李はそれ以上何も言わず、私の手を握る左手に力を込めた。