人間嫌いの小説家の嘘と本当

憧れの人はデンジャラス


五時間後――。

侑李が言ったように頭から爪先まで、ヘアスタイルはもちろんの事ネイルやメイク。そしてエステも全身してもらい、まるでセレブにでもなった気分。

途中お腹の虫が騒ぎ出し、美容師さんに笑われながらもサンドイッチを用意してもらい、そのお蔭か幾度も睡魔に襲われながら一通りを終えた。

何時用意してくれたのか分からないけれど、真新しい服に着替えて鏡の前に立つ。



「私じゃないみたい……」



七分丈の白のVネックバックタックカットソーに紺のパンツを合わせた、シンプルながらも洗練されたスタイル。
動きやすいし、シルエットも綺麗。

鏡の前で、スタイルをチェックしながらモデルになった気分でポーズを付けてみる。

髪型も、肩甲骨まであった髪をバッサリ鎖骨辺りまで切って毛先をふんわりと春らしくカールした、ミディアムヘア。



「終わったみたいだな。帰るぞ」



随分待っていたのか特に感想を言うでなく、欠伸をかみ殺しながらソファから立ち上がり、何事も無かったかのように出口へと向かう。

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