後ろの席はちびの速水くん


「とーった!!」



「うわお前なぁ」



「へへっ、返してほしかったら取りに来ればいいじゃん」



あたしは自分の胸ポケットにその取った名札を付けた。



「おま...取れるかばか」



「ふーん?出来ないんだ」



「いや、無理だろ普通。痴漢だろ」



「痴漢だなんて」



あたしは爆笑した。



その名札を取ったまま返すのを忘れていた。



授業中、



「北見くん、名札は?」



風紀に厳しい先生が北見くんの胸ポケットに名札がついていないのに気づいた。



やばっ、あたしが持ってるじゃん!!



絶対怒られるー



ひとりで焦っていたら



「いや...無くしました」



え?



「無くしたって入学してそうそう無くす人がいますか」



「すみません、俺そういう人なんで」



「名札なくしたら買ってもらうからね」



「はい」



なんで?



あたしが持ってること、庇ってくれたの?



「ねぇ、なんであんな事言ったの?」



あたしは授業が終わった後、北見くんに聞いた。



「なんでって、別にばらしても良かったけど?」



「そ、それは...」



あたし確実怒られてました...。



「だろ?」



「まぁ...はい...」



すると、



「駿!食堂行こうぜ!」



どうやらお呼び出しです。



「おう!」



北見くんはよっこらせと立ち上がっては
あたしに



「そんなに俺の名前欲しいのかよ」



って笑って教室を出て行った。



北見くんはすごく明るくて



男子の中では中心的な人物で、人気者だった。



そんなあたしはいつの間にか



彼に恋をしていたのかもしれない...。



「はっ...、」



な、なんだ夢か...



あたし寝てたんだ...。



なんだか懐かしい夢をみたような...。



「まっ、気のせいかっ」



「ねーちゃーん」



「あ、はい!」



弟が部屋に丁度来た。



「飯出来てるから、起こしてこいって母さんに言われた」



「はいはーい」



「あれ、ねーちゃん今日機嫌良くね?」



「へ、うそ」



「なんかキモイ」



「なっ」



「よーし飯食いにいこー」



「こらちょっと待てーい!」



あたしは弟を追いかけるようにリビングへ行った。

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