mariage
当てもなく街中を歩いていた私を、自宅に帰る途中にたまたま見つけた千影。

声をかけた千影は、明らかにいつもと違う私の様子に、驚きつつ、家に送ろうと提案しても、頷きもしない私を、家に連れ帰ってくれた。

ようやく我に返った私。

それでも頑なに理由を言わない私を見て、只事ではないと察したのか、それ以上は本当に何も聞かなかった。

「…とにかく、今夜はもう遅い。マンションに帰らないなら、このままここに泊まってください」

…ここに泊まる?…ダメだ。男の人の家に泊まるなんて出来ない。

「…いいえ。ご厚意は有り難いのですが、泊まるなんて出来ません。自宅に帰って少し頭を冷やします」

そう言って立ち上がったが、千影が私の手を握り止めた。

「…貴女を独りにする訳にはいかない」
「…え」

「取って食ったりなんてしません。今はただ、貴女の隣にいたいのです。傷ついた心が少しでも軽くなるまで、それまででいいから、ここにいてください」
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