青に溺れる
青に溺れる
18年生きてきて、こんなにも綺麗なものがこの世にあるなんて知らなかった。

どこまでも続く青。
晴れた日は、空と海の境界線がはっきりとわかる。

この青の先には何があるのだろう。

私は波打ち際を歩きながら、いつもそんなことを考える。

「透子(とうこ)」

後ろのほうで、聞き慣れた声が私を呼んでいる。

「拓海(たくみ)くん」

声のほうへ振り向くと、黒の長袖のパーカーにGパンを履いた拓海くんが砂浜に立っている。

「またここに居たのか」

拓海くんは少し怒ったような声をしていた。
額の汗から、私を探し回っていたことがわかる。

「ごめんね。海が見たくなったの」

海風が吹き、私の身体がぶるっと震える。
今日はいちだんと冷える。

「風邪引くぞ。帰ろう」

「うん」

拓海くんは私の右手をとり、先程と反対の方向へ向かって手を引く。
彼の大きな手は、私の小さな冷えた手をすっぽりと包み込み、あたためてくれる。

拓海くんと同じ体温になるのがこんなにも嬉しい。

見慣れた背中。
なのに今は、こんなにも逞しく思えるのは何故だろう。

私はその逞しい背中にもたれかかる。

「どうした、透子」

拓海くんは進めていた足を止め、もたれる私に問いかける。

「幸せだなって思ったの」

拓海くんへの想いが込み上げてくる。

こうやって手を繋ぐことなんて、あたりまえだった。
なのに今は特別なように感じて、拓海くんのそばにいる一瞬一瞬が幸せで、私の全てだった。

「……俺もだよ」

そう言って笑って、また砂浜を歩き始める。
私も照れて笑って、歩く彼の後ろ姿を追いかけながら歩いた。
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