明日へ馳せる思い出のカケラ
 季節は移り変わっていく。そしてその中で人々は忙しなく歩み続け、また街は変わらずにざわめいていくんだろう。
 でもそこに俺が居なくても、何も変わりはしない。
 俺っていう存在が損なわれたとしても、毎日は何も変わらず進んでいくんだ。

 俺は何の為に生まれて来たんだろうか。
 この世界に俺っていう存在が微塵にも必要とされていなく、またその意義さえも不明確なままなのに、どうして俺は生き続けているんだろうか。

 そう思わずにはいられない。
 だけどその考え方はいささか責任を放棄し過ぎている表現なんだよね。だって人間なんて本来誰しもそこに存在価値なんて持ち合わせてはいないんだから。

 ならばどうして人は生き続けるのか。どうやって日々足を前に踏み出しているんだろうか。

 きっとそれは自らの存在意義を勝ち取る為に、懸命な姿勢で社会の構成要素になって働いているからなんだろう。
 そしてそこに存在意義を見出し、自分ていう価値を築き上げる事で、明日に向け強く踏み出していく。
 そんなつらく厳しい世界に身を置いてこそ、人は生きる資格を手に入れられるんだ。心に覚悟を諭した者だけが、明日を夢見る希望を手に入れられるんだよ。

 でも俺は社会の歯車にすらなれなかった。いや、歯車になるのすら放棄したんだ。

 俺は自分に甘かったから。自分が傷つく事に耐えられなかったから。

 誰しもがそんな苦痛に耐え忍んでいるのに、俺にはそれが受け入れられなかったんだ。
 責任や覚悟っていう人が背負わなければならない最低限の務めから、逃げる事しかできなかったんだよ。

 それなのに俺がした事と言えば、身勝手に自分本位な不満を吐き出し、撒き散らしただけだったんだ。
 傷付けるばかりで、何一つ君の想いに応える事が出来なかったんだよ。

 バカとしか言いようがないよね、俺はさ。
 出せない答えばかりを追い求め、受け入れなければいけない現実から目を逸らし続けている。
 そこに明日なんて見えるはずもないのに、それを俺は分かり切っていたはずなのに、それでも俺は無意味な自問自答ばかりを繰り返す事しか出来なかった。決して到達しない答えにすがろうとしていたんだよ。

 だって心を均等に保つなんて、俺には荷が重すぎたから。
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