明日へ馳せる思い出のカケラ
第23話 新年からの再起
 生きるための目的。

 俺に足りなかったのは、そんな目指すべき【目標】だったんだね。
 俺はそれを忘れていたから、いつしか見失っていたから、だから俺は遣り甲斐も無く、変わり映えの無い人生を淡々と生きていたんだよ。それこそ、無駄に時間を消費するばかりにね。

 それが本当に生きていると言えるのだろうか。人生を歩んでいると呼べるのだろうか。
 少なくとも今の俺にはそうは思えない。いや、ずっと昔から俺は分かっていたんだよ。人としてこの世に命を授かった以上、誰しもが何かしらの【目的】を持って生きるべきなんだってね。

 元々面倒くさがりな俺にしてみれば、そんな目的なんてウザったいだけだったんだろう。
 生きる上でそれが必要なんだって理解しているのに、それでも俺は見て見ぬフリを続けていた。ううん、ただ臆病風に吹かれて縮こまっていただけなんだ。――――君と出会うまではね。

 自分に自信が無かったから、目指すべき目標に正面から向き合えなかったのかも知れない。
 目的を持つってのは、ある意味責任や覚悟を胸に抱くってことだからね。

 それは言葉でいうよりも、ずっと厳しいもののはずなんだ。だから俺はそんな重責を嫌い、また不安や迷いから逃げていたんだよ。

 だけど君と出会ってしまった事で、君と付き合いはじめた事で、俺はもう自分を誤魔化すのは無理だって感じる様になったんだ。
 君と同じ時間を共有するほどに、俺はそう感じずにはいられなくなってしまったんだよ。
 だって君が俺に教えてくれたから。君が与えてくれたから。そうなんだ、俺にはそれまで漠然としていた生きる目的が、はっきりと見える様になっていたんだよ。だから俺は君の前では何事にも恐れず、懸命な姿勢で頑張れたんだよね。

 君を幸せにしてあげたい。それが俺に見えた唯一と言っていい目標だった。
 そして君もそれを強く願ってくれていた。だから君はいつでも俺に温かい手を差し伸べてくれていたんだ。常に隣で俺を応援し続けていてくれたんだよね。
 そしてその期待に応えるべくして、俺は精一杯の力で頑張り続けたんだ。

 俺の生きる目的。それは【君】そのものだったんだね。
 だから君を失うことで、俺は全てを諦めてしまったんだ。何もかもを放り投げ、自分の殻に閉じこもってしまったんだよ。
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