よく晴れた空に
島原の門を潜ってすぐだった


傘で前が見えなかったとはいえ



ドンッ




勢い良くぶつかった



「すまねぇ!!!大丈夫か!?」




ぶつかった拍子に、雨で泥濘む地べたに

座り込んでしまった女と目が合った途端

女から目を離せなかった


泣いてる…?


ぶつかる前から、傘もささずに

ここにいたらしい

ずぶ濡れだった


なぜだか、泣いていると思った


女の頬を拭う




「コホンッ 睨めっこですか?」




ずっと、俺たちを見ていた総司が

声を掛けてくれたおかげで

我に返る



「すまん… 着物が汚れたな…
立てるか?」


肩を掴み立たせると総司が女の顔を覗く


「お怪我はありませんか?」


「大丈夫です… 
道の真ん中に立っていた、私も悪いので

それに、もう濡れてますから

着物のことも、お気になさらず」



お淑やかに、透き通る声


いつまでも聞いていたいほどだ



女は、ペコリと頭を下げ


島原から去って行く


雨に濡れて…


今更、傘はいらねぇな…




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