これも恋と呼んでいいのか

「よく売れましたよ、お陰様で」


靖美も嬉しそうに。


「ここの本もそのうち売れるかも知れないっすね」


僅かながら店にも在庫が残っていた。


「後はまあ、他の本が売れてくれりゃあな」


夏休みは児童図書の時期だ。
読書感想のための売り込みがある。


個人でお勧めのものを紹介するもよし、話題になりそうな商品はあらかじめ手配しておかなければ大型書店に持っていかれる。


冬場は冬場で、年末年始の婦人雑誌の売り上げノルマが各店舗に課せられる。


社員はとくに厳しい。


「そんなのもあるんすか!?」


言いながらも目が輝く業平。やはり営業向きだ。普通は本屋でそこまで??と嫌がる。


「よくぞ出戻ってくれた。期待してるぞ、主婦のアイドル」


「え~~っ!?」


黒髪の業平は、すっかりオバサマたちのアイドルと化していた。要領もよく、頭の回転もよく、口が上手い。


何より愛嬌があり、素直で嘘をつかない。



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