これも恋と呼んでいいのか
なんとなく、本当になんとなく、もしかしたらこの人の傍に、ずっと居るのかもしれないと。
じんわりと、そんな気がした。
家政婦も、首になったわけではなかった。確かにドン臭いところもあったが、料理も掃除も完璧で、辞めないでほしいと止められた。
ご子息に縁談を持ち掛けられたのも本当だったが、見た目から生理的に受け付けないタイプだったので、丁重にお断りしてきた。
本を無くしたのはそんなときだった。
時間を見つけては、あちこち探し回ったが見つけることはできなかった。
取り寄せを頼んでから手元に届く間に、見つからなければ結婚してもらうと脅された。
なので、見付けてくれたときは神様にさえ思えた。
どうしてももう一度、会いたかった。
年齢的にも家庭のある人かもしれないと、もちろん自制心は働いた。
仮にそうであったとしても尊敬する人として傍にいたかった。
そして、本を返す彼、と言ったのは、ほんの少しだけ勇気を出して反応を確かめたかったからだった。
落ち込んでくれたお陰で、ほんの少し救われた。
何の躊躇いもなく、満面の笑みで、よかったですねと渡されたら、その時点で心が折れていたかも知れない。
「ああ見えて、案外みんなに弄られてますよ。純粋で素直な、素敵な人です」