強引なキスで酔わせて【完結】~二人のその後 更新中
嫉妬
それから数日後、凌さんが出張から戻って来た。


「おかえりなさい、部長。」


社で会う凌さんは誰よりも厳しくて、それでいて冷酷。
けど、帰って来て一番に私に寄こしてくれた視線は、とても熱かった。
凌さんに心配を掛けたくなくて、私は麗奈さんのことを黙っていることにした。
ただ淡々と、日々の仕事をこなしていく。



出張から帰って来た日は部長でも定時に終わる。
それがわかっていたから、私は定時の合図とともに、帰り支度をし、一足先に社を出て、少し離れたところで、凌さんが社から出て来るのを待った。




数分待てば、凌さんが颯爽と社から出て来た。
私を見つけて、スッとその手を挙げ、近づいて来る。



その挙げられた手が、麗奈さんを愛した・・・



「待たせたな。行くか?」



私に向けて発せられるその言葉を紡ぐその唇が、麗奈さんを愛した・・・



私の中でドス黒い何かが産まれ始めていた。
そのことに27年、恋愛らしい恋愛をしたことのない私は気付きもしなかった。


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