翼をなくした天使達



その日の夜、私は保健室で見た夢の事を思い出していた。

また忘れている記憶の一部なのかもしれないけど、忘れているというより傍観者のようにただ自分を見つめていたという方が正しい気がする。

自分の後ろ姿なんて見た事ないけど、あの髪型あの背丈、あのシルエットはどう考えても私だった。

そして重なるように一緒にいたのは間違いなく蒼井。

蒼井に話す事はできなかったけど私の勘が当たっているなら恐らくあれは、私が飛び降りたあとの出来事だと思う。

絶え間なく降る雨に打たれて、誰にも気付かれない裏庭に横たわる二人。

私は確かに自分で選んだ。

でも自分のあの姿を目にした時、それと同時に蒼井の制服が赤く染まっていく様子が怖くて怖くてたまらなかった。

あの日の自分を否定したくはない。

だけど死ぬってすごく怖い事なんだって知った。

私はいい。私はいいけど

蒼井だけは死んでいて欲しくない。勝手に巻き込んでしまっただけだから、元の世界に戻る方法があるなら蒼井だけは戻さなきゃ。

神様なんて信じないけどそれだけはどうか叶えてください。


< 115 / 196 >

この作品をシェア

pagetop