翼をなくした天使達
「ちょっと痛いんだけどっ!」
強く握られた手首は赤くなっていて、やっと解放されたのは少し離れた大通りの公園だった。
小学生や子供連れの親子が噴水の前で水遊びをしていた。楽しそうな笑い声が響く中、蒼井だけはまだ怖い顔をしている。
「なんで余計な事してんの?」
「よ…余計な事ってなに?」
「はぁ……。あいつらまじで頭おかしいから関わるな。あと犯人探しとかうざいからやめろ」
なにそれ。
犯人探しっていうか目の前にそれらしき人がいたら突き止めるのが普通じゃないの?犯人捕まらない限り変な噂は無くならないし、みんなおもしろ可笑しく騒ぎ立てる一方だよ。
「蒼井なんか変だよ」
「……なにが?」
「犯人扱いされて悔しくないの?あの人達を突き詰めたら絶対犯人だって証拠がいっぱい出てくるよ。そしたら蒼井の犯人疑惑だって消えるじゃん!なのになんで何も言わないの?」
絶対なにか変だ。
蒼井は確かに無関心だけどあんな風にヘラヘラして馬鹿にしたような態度は許すはずがない。それに…お互い顔見知りっぽいし蒼井も何かを抑えてるように見えた。
「つーかさ、ここは現実じゃねーんだよ。こんな所でマジになってダサいと思わないわけ?お前自分で言ってたじゃん。どうでもいい世界だって」
「それは……」
「俺だってそうだよ。ここで必死になったって何かが変わるわけじゃない。どうでもいいんだよ。
犯人扱いされようとなんだってな」
確かにどうでもいい世界だって言ったよ。
でも今の蒼井はなんだか〝らしく゛ない。