翼をなくした天使達



「先生方に相談がありまして。うちの大学で今度交流会があるんですけど在校生の中で参加する人集めていただけないかと思いまして。他の学校からも沢山来ますしいい刺激になると思うんです」

まるで事前に練習してきたかのような喋り。先生達も完全に騙されてるし本人もそれを分かってやってるから腹がたつ。


「チラシ持ってきたので見やすい場所に貼っていただけたら」

ニコリと笑う営業スマイル。これが表の顔なのかもしれないけど学校に来たのは別の理由だと思う。

「そういえば何か大きな事件があったって聞きましたけど……」

きっと事件がどんな風に広がってるか見に来ただけだ。

「あぁ、今警察の人が色々調べてくれてるけどなかなか……」

「そうなんですか。犯人に心当たりはないんですか?」

「それは………」

口ごもる校長に聞いていた生徒達がワッと沸く。

「犯人は蒼井翔也だよ!みんなそう思ってるし。な?」

ひとりの男子生徒がそう言うと一斉に「そうだ、
そうだ!」とみんなの言葉が重なった。

それを聞いた保坂の口元が緩んだのを私は見逃さない。

悔しくて悔しくて私はギュッと拳を握った。


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