翼をなくした天使達



「は?俺はお前に助けてなんて頼まれてないけど」

「……」

「あの日屋上でいつもみたいに寝ててそしたらお前が来て。そんな勇気ねーだろ?って見てたら本当に飛び降りた。それで条件反射で手が伸びたってだけの話だ」

でもそれで蒼井まで死ぬ事はないでしょ?

名前も関わりもなかった私の為に蒼井が落ちて、
例えそれがとっさの事だったとしても私のせいで蒼井が死んでたら私はどうすればいいの?

助けなんていらなかった。

ひとりで飛び降りてひとりで死んでいくはずだったのにどうして、どうして…………

「責めればいいじゃんバカ!お前のせいでって
いつもみたいに嫌味ぐらい言ってよ」

その方がずっと楽だ。

すると蒼井は近付いて私の顎をギュッと掴む。

「俺がしたいからした。お前だって俺の事庇った時、そうしたいからしてくれたんじゃねーの?」

「そ、それは……」

「俺は自分がした事に後悔はしない」

「…………じゃ私を助けようとした事、後悔してないの?」

それで死んじゃってても?やりたい事とか全部ダメになって、蒼井の人生が終わったとしても?


「当たり前だろ」

あーぁ、もう本当に嫌だ。

お前なんて助けなきゃ良かったって言って欲しかった。そしたら私もその通りだよって笑える。

でもそんなに堂々と肯定されたら私なんて、とか私のせいで、とかそんな事2度と言えなくなるじゃん。

私の為にそんな事言ってくれる人がいるよって、
あの日の自分に伝えたい。

そしたら私はどうする?


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