翼をなくした天使達

●大切な人




それから数日が経って、沙織達が私達に絡んでくる事も橋本さんをいじめる事もなくなった。

きっと影で色んな事を言われてるんだろうとは思うけど、3人一緒に居ればそれはもうひとつのグループだし、いじめる気も失せてしまったのだろう。

「ってかまずは謝れって感じじゃない?」

まぁ、目立つ美保がこっち側についたのだから向こうも何も言えないんだと思う。

「わ、私はそんな……落ち着いてくれただけで十分っていうか」

「橋本さん甘い!まじで沙織は土下座ぐらいしなきゃいけないレベルだからね?」

美保と橋本さんも合わないように見えて意外と打ち解けてるし、この前は初めて3人で放課後遊びに行った。

美保は私達に合わせてるのか、それとも本当に無理をしていたのかは分からないけど髪色を暗くして気崩していた制服もちゃんと着るようになった。

「市川さんって爪綺麗だよね」
「そう?今度休みの日にやってあげようか?」

それでもオシャレなのは変わらないけど。

「そう言えば週末うちに泊まりに来ない?うちの親旅行に行くみたいでさ」

思い出したように美保が言った。

「私は週末は予定がある無理かな……」
「じゃ橋本さんは今度ね!あかりはどう?」

「私は暇だけど……」

少し口を濁したのは行きたくないからじゃない。

誰かの家に泊まりに行くのは〝まりえ゛以来で、
なんていうか……きっと友達は友達でも深い友達になるのが怖いのかもしれない。


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