翼をなくした天使達
●歯車は廻る
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自分にこんな勇気があるとは思わなかった。
きっとここは現実じゃないしと保険をかけられたからだと思うけど、朝日は昇るし次の日はやってくる。
この落ち着かない気持ちも私にとってはリアルで夢なら早く覚めてほしい。
「ねぇ、さっきからなんなの?すげー目障りなんだけど」
人気のない学校の非常階段。
もう朝のホームルームは始まってるのに教室には行かずカバンを握ったまま無意味にウロウロとしている。
何故かそこに先客がいて、それは蒼井だったけどそんな事はどうでもいい。
「私、冷静に考えてすごい事しちゃったよ…」
「へぇ。良かったじゃん」
憎たらしいほど棒読みな返事と明らかに卑猥な雑誌の袋とじを破いているその姿にものすごくイライラするけど、私はとにかくそれどころではないのだ。
美保の手を振り払って橋本さんの所に行った事。
最後に見た美保はすごく唖然としていたし、その後沙織達の元に行ったなら私のした行動を話したかもしれない。
そもそも裏庭は校舎から丸見えだし、誰かが見ていたかもしれないし、とにかく私はすごい事をしてしまった気がする。
「お前ってすげぇ中途半端だな」
蒼井がグラビアのページを見ながら言う。
「中途半端?なにが?」
「いや、その正義感?誰かに見られんのが怖かったらやるなよって思うし正義感があるなら堂々とみんなの前で助けてやれば良かったんじゃね?」
何故蒼井が私の状況を知ってるんだろう?
いや、ここに来てから昨日の事を整理してブツブツと独り言言いまくってるしそれを聞いてたのか。
ってか私どんだけ心の声が口に出ちゃってんの……