翼をなくした天使達



私は髪が半乾きのままリビングに行って冷えた水を1杯飲んだ。

今日の1限目はなんだっけ……体育がないのが救いかな。あぁ、学校に行きたくない。

ふっと時計を見るとあまりのんびりしてられない時間で、私は慌てて制服に着替えて食パンを1枚かじった。

味のない食パンは美味しくなくて確か冷蔵庫にジャムがあったはず……と探しているとガタンッと後ろで物音がした。


「ごめん、あかり。お母さん朝寝坊しちゃって……!」

慌てて飛び起きたのかその髪はまだボサボサだった。


「そんな焼いてない食パン食べなくていいから。今急いで朝ごはん作るからね!もぅ…目覚まし時計の電池買いに行かなきゃ駄目ね」

お母さんは急いでフライパンを取り出して卵を割った。


「あかりも起こしにきてくれたら良かったのに。
今度からはそうしてね?」


…………そうだ。私は何をぼんやりしてたんだろう。

シャワーを浴びてリビングに行って焼いてない食パンを食べて……

お母さんがいない事、朝ごはんが用意されてない事。

普通はすぐ気付くはずの事にいま気付かなかった…よね?

お母さんが朝寝坊する事なんて滅多にないし、起きたら必ず「おはよう」と言って座ればすぐに出てくる朝ごはんが当たり前だったのに………

どうして私は今なにも違和感を感じなかったの?

考え事をしてたから?
ぼんやりしてたから?

この冷たくて味のない食パン……口が覚えてる気がする。


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