リリー・ソング




海の底で じっと息をひそめている
鏡はいらない 此処は透き通っている

水面(みなも)は遠く 空は彼方
涙も涙のあとも 此処では見えやしない


セイレーンの声だけを待っている
どうぞ誰もわたしを見つけないで


ああ神様 あなたは
冬の日は息が白く凍り
春には花々が咲き乱れ
夏はアスファルトが灼けつき
秋には夕焼けを雲が遮ると云う


ああ神様どうして
砕けた鏡の破片(かけら)たちが
胸を裂き 肺は水を溜める
血液は揺らめいて陽炎(かげろう)
海の藻屑になれぬなら 声をください


海の底にも時折陽射しが届く
珊瑚がきらきらと輝き
88鍵の鍵盤がわたしを呼んでいる


ああ神様 あなたは
冬の日は息が白く凍り
春には花々が咲き乱れ
夏はアスファルトが灼けつき
秋には夕焼けを雲が遮ると云う


海の藻屑になれぬなら 声をください
声をください 歌うための…






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