リリー・ソング

「それと、アルバムも聴きました。」
「え? ああ、リリー、サンプル送ったの?」
「うん。初めての男友達だから。」

それを聞いて紺と貴子さんがまた大笑いした。
セカンドアルバムはまだ発売されていないけれど、私は真っ先に紺に送った。私も頑張っているよと伝えたかったから。

「何度もリピートしてます。もちろん、名盤なのは聴く前からわかってましたけど..."the gear"の次がまさかあんな感じとは思いもしなかったです。」
「うん、そうだね。実は僕も。」

私も。

"torch your heart"はその名の通り、心にそっと灯りをともすような、そんなアルバムになった。
まだ、切ないような…そしてどこか必死な、だけど、"クリー厶"みたいなキラキラした曲もほんの少しだけ散りばめて、微かに前向きな。
優しくて強い、にはまだ届かなかったけれど。
私たちは少しずつ進もうとしている。

貴子さんが私も買おう、と言ってくれたので、今度渡しますと言ったけれど、買うからいい、と断られた。
いい人だな。
こんな人が友達になりたいなんて言ってくれて、私は背すじが伸びる思いがした。

紺にも、貴子さんにも、胸を張っていられるような大人になろう。
誕生日を目前にして、私はひそかに誓った。

私はもうすぐ20歳になる。

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