リリー・ソング

パーティー…と私が目を丸くすると今度は二人ともに笑われた。

「人生初バースデーパーティー、盛大にやろうぜ。」
「いつなの? 誕生日。」
「2月14日だよな。」
「わあ、バレンタイン生まれ! チョコ好き?」
「好きだよな。」
「じゃ、チョコパーティーだ。何歳になるの?」
「ハタチだよな。」

紺がどんどん答えるので、私は頷くだけだ。
本当は私の誕生日なんて判然としなくて、その頃に生まれたのだろうと察しをつけられただけの、今までは特別とも思えなかった日だけど。
なんとしてでも当日にやろう、と多忙なはずの売れっ子二人が盛り上がってくれているので、私はとても楽しみになった。深夜も連れて行こう。きっと喜んでくれる。

「そうだリリー、全国ツアー決まったって?」

私は思わず吹き出した。

「紺って、私より私のことに詳しいんじゃないの?」

私がそれを告げられたのはつい昨日のことだ。まだオフィシャルに発表されていない。
春から、私はセカンドアルバム"torch your heart"を引っさげて、全国ツアーをすることになっている。

「俺情報通だから。…つーか、三枝が榎木さんと妙に仲良くなっちゃったみたいでさ。」
「えー、すごいじゃない! 私も行きたいな。」
「もちろん俺はチケット回してもらう。うかうかしてたらすぐソールドアウトだもんな。」
「ずるい! 私も…」
「楽しそうだね。」

朗らかな声が割り込んだ。深夜だった。

「深夜さん!」

紺が姿勢をビシッと正し、貴子さんも顔を引き締めた。

「なんて言ったらいいか...音楽本当に凄かったです。ありがとうございます。」
「そう? それはよかった。こちらこそありがとう。朝比奈くんも見事な主演だったよ。真田さんも、素晴らしかったです。」

深夜はさらりと言って微笑んだ。
< 97 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop