ばくだん凛ちゃん
「せっかくの休みなのに、ごめんね」
「いいよ。今日は晴れているし、凛と散歩にでも行ってくる」
7月に入り、とある日曜日。
今日は完全休日。
というのも、若手小児科医に短期間で教育した結果。
殆ど呼び出しが掛からなくなった。
僕が辞めることで少しは焦ったのだろう。
こういうことが起こらない限り、自分達の向上が出来ないとは情けない話だが、まあいい。
ハルのつわりが酷い。
凛の時も酷かったけれど、今回もそれに負けず劣らず。
僕は凛を抱っこ紐で抱いて出掛けた。
梅雨の合間の晴れ。
まだ真夏の暑さじゃない。
午前中の短い時間なら散歩も可能だ。
凛はふにゃふにゃ言いながら気持ちよさそうに抱っこ紐の中で僕を見つめていた。
「公園に行こうか、凛」
そんな笑顔を見せられたら、お父さんは何でもするかも。
公園に着くと梅雨の晴れ間なのでそれなりに賑わっていた。
空いているベンチに座り、抱っこ紐を外す。
「ほら、見てごらん凛」
凛を太腿の上に乗せて景色を見せる。
緑の葉が太陽の光を受けてキラキラと輝いている。
「綺麗だよね~」
ふと思う。
僕自身、こんな風に公園で過ごすなんていつぶりだろ。
…思い出せない。
目の前で4歳くらいの女の子が転んだ。
「うわわわーん!!」
大声を上げて泣く女の子。
「大丈夫?」
僕は凛を左腕でしっかりと抱っこしてその女の子を右手で起こす。
「わーん!!」
「大丈夫だよ~。
すぐに痛いの治るよ!」
やがて僕を見ながら、いや凛を見ながら泣き止む女の子。
そういえば昔、こういう事があったような…。
あ、なっちゃんか。
そうか、僕。
高校3年の時以来、こんな公園には訪れていなかったんだ。
「すみませんー!!」
その子のお母さんらしき人がやって来てきた。
「いえいえ」
僕はそう言って女の子に手を振る。
その女の子も手を振り返してくれた。
再びベンチに座る。
凛はキョロキョロしながら周りの子供たちとかを見ている。
「あれ、凛ちゃん?」
全く知らない子連れのお母さんが凛を見て話しかけてくる。
「こんにちは、今日、お母さんは一緒じゃないんですね」
ハルの知り合いかな…?
「ええ、体調が悪いもので」
「そうですか、いつも赤ちゃん広場でお会いするんです。
凛ちゃんはとびきり可愛い赤ちゃんなので、いつもお母さんにはついつい話し掛けてしまいます」
そうなんだ、広場で知り合ったのか。
「どうもありがとうございます」
頭を下げると
「早く奥さん、良くなるといいですね。お大事に」
そう言ってやんちゃ盛りの男の子2人を連れたお母さんは立ち去って行った。
男の子たちは凛にバイバイ、と手を振って賑やかにお母さんの後を追っていく。
凛、まだ生まれて6ヶ月ちょっとなのに僕の知らないところで少しずつ知り合いを増やしているんだ。
少しだけホッとした。
凛は大丈夫、僕みたいにはならないって。
「いいよ。今日は晴れているし、凛と散歩にでも行ってくる」
7月に入り、とある日曜日。
今日は完全休日。
というのも、若手小児科医に短期間で教育した結果。
殆ど呼び出しが掛からなくなった。
僕が辞めることで少しは焦ったのだろう。
こういうことが起こらない限り、自分達の向上が出来ないとは情けない話だが、まあいい。
ハルのつわりが酷い。
凛の時も酷かったけれど、今回もそれに負けず劣らず。
僕は凛を抱っこ紐で抱いて出掛けた。
梅雨の合間の晴れ。
まだ真夏の暑さじゃない。
午前中の短い時間なら散歩も可能だ。
凛はふにゃふにゃ言いながら気持ちよさそうに抱っこ紐の中で僕を見つめていた。
「公園に行こうか、凛」
そんな笑顔を見せられたら、お父さんは何でもするかも。
公園に着くと梅雨の晴れ間なのでそれなりに賑わっていた。
空いているベンチに座り、抱っこ紐を外す。
「ほら、見てごらん凛」
凛を太腿の上に乗せて景色を見せる。
緑の葉が太陽の光を受けてキラキラと輝いている。
「綺麗だよね~」
ふと思う。
僕自身、こんな風に公園で過ごすなんていつぶりだろ。
…思い出せない。
目の前で4歳くらいの女の子が転んだ。
「うわわわーん!!」
大声を上げて泣く女の子。
「大丈夫?」
僕は凛を左腕でしっかりと抱っこしてその女の子を右手で起こす。
「わーん!!」
「大丈夫だよ~。
すぐに痛いの治るよ!」
やがて僕を見ながら、いや凛を見ながら泣き止む女の子。
そういえば昔、こういう事があったような…。
あ、なっちゃんか。
そうか、僕。
高校3年の時以来、こんな公園には訪れていなかったんだ。
「すみませんー!!」
その子のお母さんらしき人がやって来てきた。
「いえいえ」
僕はそう言って女の子に手を振る。
その女の子も手を振り返してくれた。
再びベンチに座る。
凛はキョロキョロしながら周りの子供たちとかを見ている。
「あれ、凛ちゃん?」
全く知らない子連れのお母さんが凛を見て話しかけてくる。
「こんにちは、今日、お母さんは一緒じゃないんですね」
ハルの知り合いかな…?
「ええ、体調が悪いもので」
「そうですか、いつも赤ちゃん広場でお会いするんです。
凛ちゃんはとびきり可愛い赤ちゃんなので、いつもお母さんにはついつい話し掛けてしまいます」
そうなんだ、広場で知り合ったのか。
「どうもありがとうございます」
頭を下げると
「早く奥さん、良くなるといいですね。お大事に」
そう言ってやんちゃ盛りの男の子2人を連れたお母さんは立ち去って行った。
男の子たちは凛にバイバイ、と手を振って賑やかにお母さんの後を追っていく。
凛、まだ生まれて6ヶ月ちょっとなのに僕の知らないところで少しずつ知り合いを増やしているんだ。
少しだけホッとした。
凛は大丈夫、僕みたいにはならないって。