ばくだん凛ちゃん
「い…いや。
高石家はそういうの、大切にするかなあ、なんて」

透はプイッ、と前を向いた。

「ハル、後でじっくりと話をしようか」

…え〜。
もう、絶対零度の空気を纏わないでよ。
明らかに機嫌が悪い。

「うえええ…」

それと同時に凛が泣きだす。
透の冷気にビックリしてしまったんだろうね。

「凛〜、大丈夫だからね」

凛の小さな柔らかい手を握る。
するとすぐに泣き止んでご機嫌が良くなった。

「あ〜あ」

運転しながら透がため息混じりの声を上げた。

「凛、すっかりお母さんっ子になってる」

…透、まさか。

「拗ねてるの?」

透からの返事はなかった。



家に着いて凛と透がお風呂に入っている間に夕食の準備。

テーブルに食器を並べて準備万端にするとちょうど凛がお風呂から上がる。
もうすぐ7ヶ月になる凛は表情が随分と豊かになった。
私がバスタオルを広げて透から凛を受け取ると、凛は足をバタバタさせて喜んだ。

「凛、元気だねえ」

透も嬉しそう。

その後、授乳が終わると凛はそのまま寝てしまった。
タオルケットに寝かせて私達はようやく食事が出来る。
時刻は午後10時を過ぎていた。



「さて、ハル」

透は一口だけサラダを食べると手を止めた。

「さっきの話の続きをしようか」

あ、出た。
真夏のブリザード。

私もお箸を置いて透を見つめた。
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