ばくだん凛ちゃん
2階の僕達の家には21時には戻っていた。

「寝られない」

凛の面倒を僕が見て、ハルには今晩、ゆっくり寝て貰おうと思ったのに。
ベッドに横になったハルは目がバッチリ開いている。

「寝なさい」

僕は凛を抱っこしたまま、ベッドの上に座っている。
片手でハルの頭を撫でた。

「寝ようと思っても無理」

そう、お母さんは子供に母乳を与えるためにそんな感じになるとは言われているね。
でも。

「目を閉じて。
眠れなくても目を閉じるの。
そうすれば少しでも体力を失わなくて済む」

僕はそっとハルの目に手を当てた。

凛は太股の上で寝かせている。
口をモゴモゴ動かせて、おっぱいを探しているような素振りをする。
そこに指を当てると、更に口を動かす。

時計を見ると、そろそろか。

僕はそっと凛を抱き上げてベッドから降りた。
そのままリビングへ向かう。
凛をバウンサーに乗せてキッチンへ。
哺乳瓶を取り出してミルクを作る。

ハルを少しでも楽に出来たら良いけれど。

凛を抱っこしてミルクをあげていると、後ろからドアが開く音が聞こえた。

「透、ごめん」

ハルー!

「ちゃんと寝てっていっただろ?」

出してはいけない、と思ったけれど思わず語尾に怒りが出てしまう。

「でも、透だって仕事から帰ってきて疲れているのに」

「僕?
僕なら心配する事なんてないよ。
まだ、大丈夫」

適当に目を閉じたらどうにかなるし、疲れなんて。

「ハル、一度ゆっくり寝た方が良い」

「イヤ」

僕の目が丸くなる。
ハルが否定するなんて珍しい。

「透の隣にいたいの」

あ…、しまった。
そこか、ハル。

「じゃあ、おいで」

僕は座っている隣のカーペットをポンポン、と叩いた。

ハルは笑顔を見せて僕の隣へ座る。



そう、たったそれだけの事。
混乱しているハルは本当に些細な事で安心するんだ。

ミルクを飲み終えて満足そうな凛を見て、僕達は顔を見合わせて微笑んだ。
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