ばくだん凛ちゃん
「…結構飲んだと思うんだけどな」

しばらくして思わず呟いた。
満足そうにしていた凛のおむつを替えて再び抱っこして寝るかと思えば。
ずっと目を開けている。
腕から下そうとするとすぐにグズグズ言い始める。
しっかりと抱っこし直すとウトウトし始めるが、寝ない。

頼むから!
5分でいいから寝ておくれ…

そんな願いも虚しく、凛は泣き始めた。

ハルが困り果てるのも仕方がないかもしれない。

「ベッドに行こう」

凛をゆらゆらと優しく揺らす。
リビングにいると、きっとハルも寝ないだろうし。

…この子の性格、親としては結構キツイものがあるかもしれない。
何となく、そう思うのは今までの経験から。
診察で見る分には個性として微笑ましい。
しかし、自分の子供となると冷静に見られない自分がいる。

ハルの前では『寝ないね、この子』なんて言うのは絶対にダメだな。

部屋の照明を出来るだけ暗くして立って凛をあやす。
しばらくすると体に入っていた力が抜けて眠りについたのがわかった。

「ハルも少しは寝ておいた方がいいよ」

ベッドに横たわるハルをチラッと見ると少しだけ笑みを浮かべて頷いた。
そして目を閉じる。
10分もしないうちにハルの寝息がかすかに聞こえる。

当分、こういう生活が続くんだろうな。

世の中のお母さん達は辛抱強く、我が子と付き合っているよね。
この新生児期も大変だけれど、その後続く乳幼児期。
ずっと、ずっと我慢の連続。
しつけの問題だとか色々言われてもそれだけで済まない個々の個性。
それもすべて母親のせいにされたり。

世の中、いつの間にこんな窮屈になってしまったのだろう。

「うぎゃ…」

ぼんやりしていたらいつの間にか凛が目を開けて不快そうな顔をしていた。

…誰に似て君はそんなに神経質なの?
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