ばくだん凛ちゃん
「…体調、良くないんじゃない?」

この部屋はダブルベッドがその面積の大半を占めているので真由ちゃんとむっちゃんには悪いけれど、凛が寝ているベッドの端に座って貰った。

「…先生、見ただけでわかるんだ」

むっちゃんは苦笑い。

「…これでも一応、医者の端くれなんで」

浮腫が酷い気がする。
…入院して安静にさせた方が良いかな。

むっちゃんは今年に入ってすぐに入籍をした。
お相手は…なんと20歳年上のバイク屋店長の住吉さん。
僕よりも1歳年上の、関西出身のライダーだったが数年前に引退して今は監督業と店長業がメイン。

むっちゃんはハルとほぼ同時期に妊娠している。

「今回は来るの、止めようかと思ったけれど最終戦だし…」

見るからにお腹が張っている。

「本当は安静にしておくべきだけどね。
…一応、江坂先生には連絡をしておくよ。
帰ったらすぐに入院になるかな」

偶然にも主治医がハルと同じ江坂先生だ。

「もし明日、歩いて移動する時は僕も一緒に付いていくよ。
…それくらい、危ないんだよ?」

そう言うとむっちゃんは顔を強ばらせて頷いた。

「透君がいてくれて本当に良かった〜!」

僕とむっちゃんの白い視線がニコニコ笑う真由ちゃんに刺さる。
…全然、気が付いていないけれど。

「…うーん」

凛が寝返りしながら起きた。
そして周りを見て、泣き出す。

「ごめんね〜、凛ちゃん。
おばさんだよ〜!」

真由ちゃんは嬉しそうに凛を抱っこする。

「あら、おむつ替えよっか」

いつの間にかパンパンに膨らんでいたお尻を触って真由ちゃんが声を掛ける。

「透君、ミルクの準備もしてあげて?」

さすがは4人の子供を育て上げた真由ちゃん。
的確な指示を出す。

僕がミルクを作っている間、真由ちゃんはむっちゃんにおむつの替え方を教えていた。

…こんな光景を見ると、全ては順繰りで命は繋がれていくのだな、なんて思う。
< 132 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop