ばくだん凛ちゃん
「おめでとう」

あと1レース、午後から残っているのに祥太郎君はシーズンチャンピオンを決めた。

むっちゃんとピットに戻り、僕は祥太郎君に手を差し出す。

「ありがとう、先生」

祥太郎君は僕の手を握り、思いっきり握手をした。
彼もまた、拓海と血縁があり、笑顔が良く似ている。

「ほら、こっちへおいで」

祥太郎君は僕が抱いている凛に手を差し伸べた。
僕はそっと凛を祥太郎君に渡す。
目を丸くしている凛は僕の顔をじっと見つめたまま、固まっていた。

「せっかくだから一緒に乗ってみる?」

何と、祥太郎君は凛を抱っこしたままチャンピオンマシンに跨がった。

「良い景色だろ?
ここから見る、全ての景色は最高だよ」

さすがは子沢山の父親。
子供の扱いは上手い。
凛はガソリンタンクに興味を示し、バンバン叩き始めた。

さすがに見てるこっちがヒヤヒヤするので止めようとすると祥太郎君は僕を手で制し、

「きっと凛ちゃんの生まれつき我の強い性格はライダーに向いてるよ。
乗りたくなったらいつでもおいで。
俺が付くから」

いや、僕は何があっても乗せないつもりだけど。

「バイク乗りのお父さんなら許してくれるよ。
…稼ぎも良いし」

ニヤリと笑いながらこっちを見るなよ。

「あ〜!」

凛も楽しそうに笑うなよ。

「先生、マシンが気に入ったみたい。
お買い上げ、ありがとうございます〜!」

いやいや、ド素人が乗れば扱いきれないし。
更に凛なんか無理だし。

「先生!あれは無理でも凛ちゃん用にポケバイも売っているんで、いつでもおっしゃってください!」

むっちゃんが更に畳み掛けるように言うとその場がどっと笑いに包まれた。

いやいや、勘弁してー。
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