ばくだん凛ちゃん
「はい、凛ちゃん、おめでとう」

寝ている凛に祝儀袋を渡そうとするオジサン…いや、凛からすればオジイサン連中。

「ご遠慮申し上げます」

透がその祝儀袋を取ると丁寧に返した。

「透!
お前は年寄り連中の好意を無駄にする気か?」

武伯父さんが透を睨み付ける。
そんな事、全く気にせずに透は

「魂胆丸見えですよ、オジサン達」

あの〜、透。
私には何が何やらさっぱり。

「保育科のモデルくらい、引き受けてくれよ〜」

お義父さんの弟、慶叔父さんが透に手を合わせた。

「嫌です。
凛は売り物でも何でもありません」

…ちょっと、待て。

「…あの〜、どういう事でしょうか?」

思わず口を挟んだ。
透は私の顔を見て

「…この人達、凛を売り物にしようとしている」

不服そうに言った。

「透!
人聞きが悪いよ。
凛ちゃんが可愛いから是非ウチの大学の保育科でモデルとして…」

慶叔父さん、困った顔をして私に訴えるけど、透は黙ってはいない。

「そんな風に言って、タレント事務所に売り込むつもりでしょ?
僕、知ってるよ。
宏伯父さんの知り合いにそういう人がいるの」

宏伯父さん。
図星ね。
しまった、っていう顔をしているもん。

「でも、どうして?
凛、特別可愛いとかじゃないのに」

私が再び口を挟むとオジイサン3人組は目を丸くした。

「…他の赤ちゃん、見たことないの?」

「入院中ならありますけど」

ますます目を丸くされた。

「親が気付いてないとは…」

慶叔父さんの残念そうな声。

「…つまらないビジネスに巻き込もうとしないでください」

透は前からこのオジイサン連中に何かを言われていたみたいでイライラしているのがわかる。

「とにかく僕は凛の保護者としてそういうのは一切認めません。
ハルも子供をどこかの事務所に入れようと何かアクションを起こさないように」

…するわけないでしょ。

っていうか、わざわざそんな事を言いに来たわけ?
お宮参りの日に?

私がイライラしてきた。



そんな時、再びインターフォンが鳴った。
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