ばくだん凛ちゃん
「ハル、凛はどう?」

その日はそのまま当直だったので夜間診療前に僕はハルに電話をした。

「今日ね、予防接種に行ってきたから」

少し嬉しそうなハルの声。
余程、若林先生の対応が良かったと思われる。

「そう、良かった」

「凄く親切な先生だったの。色々と教えて貰った」

…僕も時間があればハルに伝えていたけど?
まあ、他人に言われた方がちゃんと聞くものかもしれないけれど。

「じゃあ、凛はそこで診て貰うんだね」

「うん、そうする」

「軽い風邪程度なら行く必要はないからね。
そういう時って周りでもっと質の悪い病気が流行ってたりするし」

「勿論、最初に透に意見は聞くわよ」

一応、それを聞いて安心する。
…そんなに心配なら自分で診ろよ、って僕を知っている人間なら言いそうだ。

「じゃあ、おやすみ」

「おやすみなさい」

僕は電話を切った。

しばらくして夜間診療に向かうと今日もまた人で溢れ返っている。
忙しくなりそうだ。

多分、殆どが季節性の風邪と思われるが。



ただその後、ハルが大パニックを起こした事なんて、翌日の夕方まで知らなかった。
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