ばくだん凛ちゃん
【夜分にしつれいします。
凛ちゃん、今日初めての予防接種でしたよね?
様子はどうですか?】



メールにはこんな文章が綴られてあった。
…透、黒谷先生に何か言ったのかな。



【今、40度近くの熱が出ています。
どうして良いのかわからなくて】



その返信から1分経たないうちに電話が掛かってきた。

「凛ちゃん、水分取れていますか?」

黒谷先生のハキハキした声が聞こえる。
思わず涙が出そうになった。

「1時間に1回はおっぱい飲ませています」

普段、凛が寝ていたら起こさずにいるけれど今夜はグズるし、時間を見て飲ませている。

「脱水は大丈夫そうですね」

黒谷先生はホッとした声を出した。

「痙攣が起こったらとにかく病院へ行ってください。
今日なら高石先生が夜間に入っていますし」

いや、でも…

「嫌じゃないですか?
ただでさえコンビニ受診がほとんど、という状態なのに身内が行くなんて」

本人には聞けない、こんな事。
透とはその件と話した事はない。
でも…雰囲気を醸し出しているといえか何というか。

黒谷先生は一つ、咳払いをして

「乳児の痙攣は色々と考えられる原因があります。
朝まで待って良い時もありますが、この場合は受診しても問題ないと思います。
まして高石先生ですし」

黒谷先生の透に対しての信頼度は半端ではない。
それは有り難い話だけれど、過剰に信頼してない?と思う事がある。

『ちょっと雪、代わって』

後ろで男性の声がした。

「あ、電話代わりますね」

誰と?

思わず心の中で突っ込んだ。
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